(55版のAddendum IIでリチウム電池の ERGコードが緩和されました。何故ですか?)

Q.
危険物規則書第55版の更新のために発行された2014年6月6日付の Addendum IIでUN 3480とUN 3481のリチウム・イオン電池にかぎり、緊急事態の際にキャプテンが執るべき措置を現したERGコードが 9FZ から 9F に緩和されました。リチウム金属電池は今までと変わらずにERGコードは 9FZ のまま据え置かれています。リチウム・イオン電池の場合は、緊急に着陸をしなくても良いことになったのでしようか? 航空機に常備されているハロン消火剤はリチウム電池火災に効力がなかったのではないですか? リチウム電池火災に水が最適と言われていましたが、そうではないのですか? なぜ、リチウム金属電池は 9FZのまま、すえ置きなのですか? 説明をしてください。 (2014.6.30)
A.
ERGコードの F は「引火性がある」と言う意味で、Z は「航空機の貨物室の消火設備では火災を消したり、鎮圧できない可能性がある。直ちに着陸を考慮すべし」と言う意味です。モントリオールで2013年10月28日から11月8日の間に開催された第24回ICAO DGP (ICAO危険物パネル会議)で本件が討議され、航空機に搭載されているハロン消火剤は確かにリチウム金属電池の火災鎮圧には効果がないが、リチウム・イオン電池の火災には効果が認められ、また、周辺にある可燃性の物品に延焼するのを防ぐ効果があると認定された。リチウム・イオン火災は通常の火災と同等であり 9Fのコードの方がより適していると合意された。9Fのコードは、リチウム・イオン電池の航空輸送を円滑にし、乗員に対しても火災が発生しても制御できると言う安心感を与え、乗員の心理面から有効であると判断された。反対意見として Z を落とすことにより、水の有効性を否定してしまう恐れがあると主張があった。大多数が、ERGコードは 9F がより適切であると変更を決定した。リチウム金属電池は引き続き 9FZ のままと決まった。

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