(IATAの訓練を受け、ディプロマを持っていないと、危険物の航空輸送は出来ないとは本当のことですか?)

Q.
IATAの危険物取扱の教育訓練を受講し、合格して、ディプロマ資格を持っていないと危険物貨物の取り扱いも、発送も出来ないと言っている方がいます。本当でしょうか? IATAとして、国として、航空会社としての見解はどのようになっていますか?  (2012.9.30)
A.
答は、本当です。

危険物取扱の教育訓練を受け、合格し、資格がなければ航空での危険物輸送は出来ません。そもそも、航空による危険物の輸送規則を作ったICAO (国連の民間航空の機関) も、その規則を推進している航空会社の団体であるIATAも、国連の加盟国である世界の国々、及び日本国政府も、IATAに加盟している世界の航空会社も、すべての関係者が危険物規則の徹底を叫んでいます。危険物申告書の作成は国連で義務付けていることであり、当然、教育訓練を受けた資格所持者が作成することになっています。

アメリカやイギリスは厳しく罰則を適用して、違反者を罰していますが、日本は、あまりその点熱心ではありません。不謹慎な言い方ですが、大きな事故でも起きれば、わが国も目を覚ますと思いますが、航空法が航空機の運航者に主眼を置いているので、危険物を仕立てる荷主は圏外になっています。国土交通省は国連 (ICAO) と直結していますが、荷主を監督する経済産業省や農林水産省はICAOと直結していません。危険物の輸送については大きな温度差があります。実務的には、荷主も、運送業者も、貨物代理店も、フォワーダーも、航空会社も、すべて教育が義務付けられていますが、日本では、荷主さんが一番温度差のある位置にいます。アメリカやイギリスでは、一番川上にいる荷主さんに対しても、輸送に関しては運輸省が厳しく管轄しています。ここが、日本と違うところです。

日本では、荷主さんの監督が抜けています。国としての逃げ道は、下流にいる貨物代理店、フォワーダー、航空会社がシッカリしていれば、上流が甘くとも、下流で貨物代理店、フォワーダー、航空会社が止めてくれると思っているのでしょう。アメリカの場合は、輸送に関しては、横断的に、荷主を含むすべての業種が運輸省と連邦航空局の監督・管轄下に入ります。日本の航空法は航空に直接携わっている業界しか入りません。荷主さんには航空法は無縁のものなのです。

危険物の規定はDGR 1.2.1項の中ですべての当事者に規則の遵守義務を与えています。1.2.2.1に国連のICAOの役割を説明しています。日本国は国連に加盟していますから、国家として遵守の義務があります。1.3.1.1では荷送人はすべての規則を順守しなければならないとあります。この規則の中には1.5に記載されている教育要件も含まれています。また、1.3.1.2では違反者は法的制裁を受けることと、1.3.1.3では規則書にshallとmustが使われている条項は、必ず守らなければならないと規定されています。従って、教育も、分類も、識別も、包装も、申告書も、取り扱いも、すべてmustが使われていますから、DGRの各ページにmustとあるものは遵守しなければならないのです。

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